マンドレイクは地中海沿岸に分布する多年草で、マンドラゴラともよばれています。根生葉がロゼットになっており、春に白または淡青色の花を咲かせます。初夏には創世記に「恋なすび」と記されている、小さい青リンゴのような果実をつけます。マンドレイクはアトロピンなどのアルカロイドを含んでおり、有毒植物です。しかしながら、中世ヨーロッパでは微量の根を、麻酔薬や鎮痛薬などに用いることもありました。
マンドレイクの根は写真のように二股に分かれ、人のように見える姿から、多くの伝承を生んできました。近縁植物のマンドラゴラ・オータムナリスの紹介でも述べましたが、この植物の人型をした根には悪魔が住み着いており、引き抜かれると強い悲鳴を発し、引き抜いた人を殺してしまうという伝承は有名です。
さらに、この植物は神秘的な力をもつと信じられ、身につけていると子宝に恵まれるといった俗信が、中世ヨーロッパには広がりました。また、根を大切に持っていると幸運が訪れるとも考えられていました。このような迷信や信仰のため、マンドレイクの根はお守りとして用いられました。お守りにするマンドレイクの根は、さらに人に似せて彫刻され、大切にされたようです。